定例研究会の様子
去る6月30日に明治記念館におきまして、平成22年度定期総会後に引き続き第1回定例研究会を開催いたしました。「特定施設と医療の関わり・ターミナルケアを考える」をテーマとした研究会で、109法人151名という多数の皆様にご参加いただきました。
今回は、特定協会員事業者であるお二方より、施設運営をしていく中で「医療との関わりとは何か」、「ターミナルケアの取り組み」にスポットをあててご講演いただきました。
橋本俊明様
第1部では、株式会社メッセージ 代表取締役会長の橋本 俊明様より、特定施設事業者と医師という立場から「特定施設と医療の関わり~医療は介護に貢献できるのか~」についてご講演いただきました。
橋本様のご講演の中でメッセージとして伝えられたのは「医療に生活が支配されていないか」ということであったと思います。特定施設は“生活の場"であること。そこに不必要に医療の介入がされていないか、と橋本様は参加者に問い質しました。また、医療がすべきことと入居者の望んでいることとは決してイコールではない。例えば、糖尿病患者が好きなものを食べたいという本人の思いより、施設管理者が本人の健康管理を優先し食事管理をすることを優先していないか等。これらを含め特定施設での医療について、7つの問題点をあげ、「医療行為の規則が守られているか、介護士の死生観、説明を受ける権利、リビングウィル・DNRなどについてご説明いただきました。
吉松泰子様
第2部では、株式会社誠心 代表取締役社長 吉松 泰子様より「医療・特定施設との連携~特定施設での終末医療~」についてお話いただきました。
吉松様は、特定施設と医療の関係について、「特定施設の医療は治療ではない、生活を支えるために医療、看護、介護があり、それらは入居者が一生懸命に生きるために利用されるものである」と話された後、実際に吉松様が運営される施設でのターミナル期の入居者とその家族との関わり、気管切開された入居者が食事を摂り、スタッフの温かい声掛けにより活性化した楽しいひと時を過ごしている生活風景のビデオを放映されました。ビデオの中で「本当の姿をしっている人(スタッフの方)には最後をみてほしい、本人が幸せであったと知ってほしい。」と言われた家族様の言葉が私には印象的で感慨深く感じられました。
最後に、吉松様から「人は死を待つ必要はない、死ぬために生きている、そのためにはいまを楽しく精一杯生きてほしい。そのお手伝いをするのがわたしたちの役割です。そして、利用者やその家族とスタッフが思いやる関係の中で、自分の役割を感じることが大切です。」と締めくくられました。
ご参加された皆様には講演を聴かれ運営のヒントとして感じられたことも多くあったと思います。事務局員の私も、橋本様、吉松様の講演で共通することとして感じたことは、「生活の場である特定施設において、医療・介護はそれを優先する生活ではなく、個人の意志を尊重した、その方らしい生活を過ごしていただくためのひとつ(医療・介護)でなければならない。」ということであったと思いました。
お二方の興味深い講演にあっという間に時間が過ぎてしまいましたが、今回ご参加いただいた皆様にとって、「医療機関との連携」「ターミナルケア」について改めて考える機会となったのではないでしょうか。
【財団法人京都ライフクリエイト事業団 調】
アンケートでいただいたご意見
- 【第1部】
- ・医療に対する考え方が非常に近く感じたので共感を持てた。
- ・入居者は生活者としての見かたが大切。今回のような医師の話は初めてきいた。参考にしたいと思う。
- ・医療の立場からみた施設運営の一つの視点としてとても参考になった。
- ・話の内容のみならず流れが面白くあっという間に時間がたった。
- ・医師の立場、経営者の立場、双方からの話がきけて良かった。
- ・医師の対応は施設にとっておおきなポイントになる。医療に振り回されることのないように施設の考え方を整えるとともに協力してもらえる医療機関を確保したい。
- ・病院とホームの違いや入居者に対する医療的な関わり方、問題点の解決方法など今後役立つ、参考になることが多くあった。できていることも多くあるが周囲の意見にさからえず妥協でやっていたこともあるので自信をもって説明して入居者の希望にそったケアができるようにしたい。
- ・行動制限に係る要因と削減のためのヒントを頂き大変参考になりました。
- ・今後の施設の取り組みと逆の考え方でこれまでの慣習をくつがえすような内容で大変勉強になりました。
- ・医療が生活を支配するものにはなってはいけないという事には共感したが、実際は現場では医療と生活のクラッシュ、特にターミナルで起きていることが現実。但し、医療との連携が今後重要視されることは間違いないと思う。
- ・施設運営の医療との関わりの基準をおしえていただいた。医師との関わり方が今後の課題となります。
- 【第2部】
- ・熱い講演だった。死後の入浴には感動しました。
- ・普段見聞きしない他施設の活動に触れることができうれしかった。
- ・そこまでやってみたいと思いました。
- ・看護師の観察等の技術が非常に高くないとケアできないのではないかと感じました。
- ・職員、利用者、家族と同じ方向を向いて進めることの大切を今一度知りました。
- ・ホームは生活支援の場であることを改めて認識させられる講演だった。
- ・考え方が明確で、それを望んでくる方に対して最高のサービスだと思う。介護、看護職員への教育の参考にさせていただきたい。
- ・入居者の精一杯生きる生活を親身になってサポートする姿勢がとてもよくわかりました。
- ・共に生きる場、素晴らしいと思った。利用者と職員の笑顔が印象的だった。
- ・終末看護は特定施設の今後の大きな課題です。
- ・死後入浴することがどこの施設でもできたら素晴らしいと思いました。
- ・「医療・特定施設との連携~特定施設での終末医療~」
株式会社誠心 代表取締役社長 吉松 泰子様 - ・「特定施設と医療の関わり・ターミナルケアを考える」 参考資料
なお、第1部「特定施設と医療の関わり~医療は介護に貢献できるのか~」の、講演資料の掲載につきましては、講師のご了解が得られませんでしたので、ご了承願います。