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2015年10月18日

特定施設 嚥下・リスクマネジメント研修会を初開催しました!

 平成27年10月18日、特定施設 嚥下・リスクマネジメント研修会を東京渋谷FORUM8オリオンホールにて開催致しました。この研修は、特定協として初めて取り組む研修会で、ご入居者様の食の安全、安心、生き甲斐につなげることを目的として開催し、53法人147名と研修プロジェクト主催研修の中では、最多数のご参加を賜り、盛況のうちに終了致しました。 今回の研修会では嚥下や食のスペシャリストお三方を講師にお迎えし、4つのテーマの講演とグループディスカッションを行いました。

 

 第1部「要介護高齢者の飲み込みの機能と障害について」、第2部「嚥下障害を見抜くコツとトラブル回避」をテーマとして、中山渕利先生(日本大学歯学部摂食機能療法学講座 助教・歯学博士)にご講演いただきました。まず中山先生から「介護現場では食べられる方が胃ろうになっていたり、食べられない方が食べていたりすることがある。現場では、誤嚥性肺炎や窒息等のリスクに重きをおく傾向があるが、今回の研修会は“ご入居者の楽しみ、生き甲斐に目を向けられる研修”になってほしい」とメッセージをいただきました。

 

中山 渕利先生

中山先生の講義では、摂食嚥下機能のメカニズムや“食”という一連の動作に必要な5期(先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期)等の基礎知識を踏まえた上で、摂食嚥下障害に至る原因、加齢に伴う嚥下機能低下の関連性(嚥下反射、サルコペニア、脳卒中等に伴う後遺症、認知症等)についてご説明いただきました。
また、摂食嚥下障害を疑う症状や観察のポイントを嚥下造影検査の映像を見ながら丁寧にご説明いただき、摂食嚥下障害の方が陥りやすい誤嚥性肺炎や窒息等について、どのように予防したらよいのか、誤嚥、窒息しやすい食品とはなにか、適切な食事形態、食事姿勢とはなにか、起きてしまった時の対応はどうすればよいのかをポイントを「リスクマネジメントの観点」から絞ってご教示いただきました。

 

石山 寿子先生

 第3部「口の機能を維持するための対応法」について、石山寿子先生(医療法人社団永生会 南多摩病院 言語聴覚士)にご講演いただきました。「ケアを生かすキュアの知識と対応法を知ろう」を主眼に置き、 (1)危ないかどうかみれるようになろう (2)機能が低下しないようにするための方法を知ろう (3)いつまでも長く食べられるように機能を維持することを考えよう、という実践に繋がる具体的な目的と方法に論点をおいた講義でした。食事での意味のある離床(呼吸機能、腸管の蠕動等の向上や精神ストレスの軽減等)、嚥下機能に影響する薬剤の調整(薬を調整することで口の機能の回復の可能性がある)、食べられる口を維持するための口腔ケアや間接的訓練方法、嚥下を誘発する食事介助の仕方等について詳しくご説明いただきました。特に食事介助については、一口量や食べるペース、食事のための補助具、食事姿勢、交互嚥下・複数回嚥下等、言語聴覚士の視点から具体的方法についてご教示いただきました。

 

木口 圭子先生

 第4部「要介護者も介助者とともに生きがいを感じる食事づくりについて」をテーマに、木口 圭子先生(社会福祉法人賛育会 賛育会病院 管理栄養士)にご講演いただきました。前講義の内容を踏まえた上で摂食嚥下障害の方へどのようなお食事を提供すれば良いか、食材選びや調理方法(切り方、加熱、水分量、素材の組み合わせ、味付け等)を管理栄養士の立場からお話しいただきました。食べる上で特に大切な“噛む”ことをポイントに、現代と弥生時代の日本人の比較を交えながら噛む回数、食事時間、噛むことのメリット(内臓の働きを助ける、大脳の働きを活発にする、良い歯を作る、ダイエットになる等)について教えていただきました。また、賛育会病院で取り組まれている摂食嚥下障害の方へのチームアプローチについて、症例を参考にご説明いただきました。そして、最後に高齢者の方にも使いやすいシルバーデザイン等の「頑張らない料理グッズ」のご紹介もいただき、参加者も「なるほど」という声が上がっておりました。

 

グループディスカッション
(コーディネーター:中山先生)

 第5部として中山先生にコーディネーターを務めていただき、石山先生や木口先生にも参加いただきながら、摂食嚥下障害がある認知症ご利用者の2事例を題材にグループディスカッションを行いました。どのようなアプローチをすればご本人にとって安心、安全に食事を召し上がっていただけるのか。認知機能や嚥下状態、食事の姿勢、薬の調整、義歯の具合、味付け等といった具体的アプローチから食事を切り口とした看取り対応・家族・介護・看護スタッフの役割等活発な意見交換をされていました。最後にグループからの発表をしていただき、中山先生に総括をいただきました。

 

 本研修会は、特定協として初の試みでしたが、各ホームで摂食嚥下障害かの見極めや対応、安全な食事の提供、食の質向上に課題を持たれていると実感した研修会でした。ご参加いただいた皆様のアンケート結果では多くの方に高評価をいただき、
「今日学んだことをホームで実際にやってみたいと思った」
「食事形態の見直し、嚥下状態、咀嚼の様子を今後はよく観察しようと思った」
「グループディスカッションで、食事について多職種の目線、意見が参考になった」
「嚥下機能低下のアセスメントの幅が広がった。盲点を気づかせていただき、対応策も広がった」
等、施設での日々のケアや食事メニュー考案に生かせる研修会だったとご意見をいただきました。
今回の研修会でいただきました皆様のご意見を参考に「明日実現できるケア」の研修運営に努力をし、取り組んで参りたいと思います。
多数の皆様に、「嚥下・リスクマネジメント研修会」にご参加いただきまして、本当にありがとうございました。